孔子『自分で考えるより教わる方が早い』


巻第八 衛霊公第十五 三十一節

 

 

子曰、吾嘗終日不食、終夜不寝、以思、無益、如不學也

先生が言われた、「わたしは前に一日じゅう食事もせず、一晩じゅう寝もしないで考えたことがあるが、むだであった。学ぶことには及ばないね。」

岩波文庫論語』220ページ

 


○感想
どうなんだこれは。巷でよく言われる「自分の頭で考えろ」とは全然違うじゃないの。

哲学など答えが出ない問題は自分で考えぬくのが何より大事だと思うので孔子が何と言ってても「少し読み、多く考える」といったやり方が当てはまると思う。

しかし数学や化学みたいに答えのあるものはすでに出来上がってる公式や体系をガンガン取り入れていくのが効率の良い学びなのは間違いない。
スポーツや芸術なんかの非言語的な技術でも、モノにしたくなったらとにかく人に教えてもらって基礎になる「型」を仕込んでもらうのが絶対に良い。初めから自己流でがんばると結構な時間を無駄にする。この点では孔子の言う通り。多分孔子の時代の学問はこういうスポ根的な「すでに出来上がった型を仕込む」ものだったんだろうし。

 

自分で考えてもなかなか答えが出ないが、人に聞けばあっさり答えが返ってくるということはめちゃくちゃありそうな話。問題は「何を人に聞いて、何を自分で考えるか」だが…まず手始めにこの問題自体を人に聞いたり自分で考えたりして学びのコツを掴むのもよさげだ。

 

それにしても孔子ほどの人間でもこんなふうに無駄を体験するんだな。もしかしたら「食事もせず、寝ることもせず」の部分がダメなのかも。人間の脳は考えてない時に一番良く活動してるらしいから。

名案を思いつきたければ栄養をとってよく休もう。

 

 

論語 (岩波文庫 青202-1)

論語 (岩波文庫 青202-1)