カール・ヒルティ『忍びうる者に勇気あり』

『幸福論第三部』 はじめに。この世は苦しみの場所か。なぜ善人も苦しむのか。 この世は喜びと楽しみの場所というよりおびただしい苦しみのある涙の谷に見えるが本当にそうか。 罪は裁きによる苦しみを生むが、罪を持たないのに苦しむ人もいる。「なぜこの世…

ゲーテ『自分の好きなように世界を知るがいい』

『ゲーテ格言集』科学、自然、二次元について 自分の好きなように世界を知るがいい。世界は常に昼の側と夜の側を持っているだろう。「格言と反省」から新潮文庫『ゲーテ格言集』68ページ ○感想 世の中に幸不幸はなく、あるのは出来事についての自分の判断の…

トマス・ア・ケンピス『善良で温厚な人物について』

第二巻第三章 ■1 人は自分を平安に保ってはじめて、他人に平和をもたらすことができる。温厚な者は学問を積んだ者より益するところが多い。激情の人は善を悪に転じさせ、簡単に悪を信じる。しかし善良で温厚な人は全てを善に転じさせる。平安の中にいる者は…

孔子『知ってるというのは好むのには及ばない』

巻第三 雍也第六 二十節 子曰、知之者不如好之者、好之者不如樂之者。 先生が言われた、「知っているというのは好むのには及ばない。好むというのは楽しむのには及ばない。」 岩波文庫『論語』84ページ ○感想ですよね。後半が特に重要。楽しんでるってのは幸…

トマス・ア・ケンピス『人生の悲惨を顧みて』

『キリストにならいて』第一巻二十二章 ◼︎1 人は心を神に向かわせなければ惨めさを免れない。 思い通りにならなかったといってなぜ思い乱れるのか。何事も思い通りになる人間というのは一人もいない。 帝王だろうと法王だろうと、この世では何かの難儀や苦悩…

マルクス・アウレリウス『最も良い復讐の方法』

『自省録』第六章七節 もっともよい復讐の方法は自分まで同じような行為をしないことだ。岩波文庫『自省録』82ページ ○感想幸せになるのが最高の復讐とか言うが、それよりはこっちの方がしっくりくる。しかも簡単。ストア主義的な超然と見下ろす態度の有効活…

孔子『自分で考えるより教わる方が早い』

巻第八 衛霊公第十五 三十一節 子曰、吾嘗終日不食、終夜不寝、以思、無益、如不學也 先生が言われた、「わたしは前に一日じゅう食事もせず、一晩じゅう寝もしないで考えたことがあるが、むだであった。学ぶことには及ばないね。」 岩波文庫『論語』220ペー…

マルクス・アウレリウス『まっすぐでいるか、もしくは…』

第七章十二節 まっすぐでいるか、もしくはまっすぐにされるか。 岩波文庫『自省録』104ページ ○感想 これほどシンプルで有無を言わせぬ規律は他にはない。人から言われる前にとっとと正しく生きろという解釈ができる。 個人的に最大の関心ごとの一つである「…

パスカル『人に好印象を与えたいなら…』

四四節 君は人からよくおもわれたいか。そうであるなら君のよさを人に語ってはならない。新潮文庫パンセ上巻37ページ ○感想まさしく!第一、自分の良さは自分じゃわからんものだし、もし本当にわかっててもそれを強調すれば台無しになるのは明白。 「俺はイ…

ラ・ブリュイエール『最も願われるものはなかなかやってこない』

カラクテール第四章六二節 最も願われる事柄はなかなかやって来ない。よしやって来るにしても、それは決して、それらが大きな喜びを以って迎えられるような時期ないし場合においてではない。岩波文庫『カラクテール』上巻161ページ ○感想相変わらずな皮肉な…

カール・ヒルティ『仕事の上手な仕方』

『幸福論第一部』 ■はじめに 仕事の上手な仕方は、あらゆる技術の中で最も大切な技術である。この技術を一度正しく会得すれば、その他の一切の知的活動が極めて容易になるからである。 しかし人々は上手な働き方より、休息を求める傾向がある。働きと休息は…

スティーブンスン『怠け者のために』

岩波文庫『若い人々のために』収録 ここでいう怠け者はめんどくさがりとか本当に何もしない無気力な人というより、「勉強といえば学校、仕事と言えば会社」というような世間一般の常識とは相容れない自由な精神の持ち主…と捉えた方がわかりやすい。 ■勤勉な…

穂積陳重『復讐の基礎観念・復讐の沿革』

「法の起源に関する私力公権化の作用」二章、三章 ■復讐の基礎観念 たいていの生物にはその種族的存在を害する攻撃に対し反撃する性質がある。 こと人類に至っては自らの生存を脅かす反対勢力を除去しようとする感覚はほとんど本能的であって、生物のみなら…

クリス・アセート『筋量を増やすためのトレーニング』

『究極の筋肉を造るためのボディビルハンドブック』2章 ◻︎用語ワークアウト→筋肉トレーニングのこと。レップ数→例えば「10回3セット」の「10回」の部分オールアウト→全ての力を出し尽くして限界まで追い込んだ状態。トレーニーが目指す境地。オーバートレー…

モーム『イギリス文学』

読書案内一章 ■はじめに 試験や知識のために読まなければいけない本があるが、そうした書物は退屈で、むしろ諦めの気分で読む。しかし読書は楽しくあるのが本当である。楽しい書物は、生計を立てる役には立たないかも知れないが充実した生活を送ることには役…

ラ・ブリュイエール『野心と自由』

カラクテール四章「心情について」五九節 立身出世に向かっては、つまらない気まぐれな事柄に向かって飛ぶ時と同じ翼ではとても飛べない。自分の気まぐれに従う時は何か自由な感じがするが、地位を追って走るときにはそれどころか隷従の感じがする。大いに出…

唯円『仏の救いに甘えている者について』

歎異抄十三条 まず、阿弥陀仏の本願とは、「生きるもの全てを救う」という誓願のこと。浄土真宗ではこの誓願が成就していることから「我々はすでに救われている」と説く。 ■本願ぼこり、救いに甘える者について いかに弥陀の本願が不思議なものだからといっ…

ベッカリーア『死刑について』(犯罪と刑罰16章)

■はじめに。死刑は役に立つか、正しいか 苛酷な刑罰をいくら用意したところで人々は良くならないのを私は見た。そこで以下の二点を検討したい。・死刑は有用なのか・賢明な政体にとって正しいのか ■人を殺すことができる権利とは 法律や主権は各個人の権利の…

エピクロス『水とパンで快に満ちる』(断片二の37)

水とパンで暮らしておれば、わたしは身体上の快に満ち満ちていられる。そしてわたしはぜいたくによる快を、快それ自身のゆえにではないが、それに随伴していやなことが起るがゆえに、唾棄する。岩波文庫『エピクロス・教説と手紙』114ページ ○感想苦難に対し…

ヴォーヴナルグ『小さな人物は小さな職務につけること』(反省と格言六九五)

ヴォーヴナルグはラ・ロシュフーコー、ラ・ブリュイエールにならぶフランスモラリストの一人。パスカルにも影響を受け、「本人が作品を完成させたのではなく、作品が本人を完成させた」という点でモンテーニュに共通する部分もあるとか。というかモンテーニ…

ジンメル『美醜、いずれに慣れると卑しさが現れるか』(日々の断想129節)

醜いものに慣れている場合と、美しいものに慣れている場合と、人間の卑しさが多く現れるのは、どちらのほうか。私にはわからない。岩波文庫『愛の断想・日々の断想』118ページ ○感想 こういう問題提起ができる人間は知的な感じがする。さすが社会学者。それ…

ショーペンハウエル『読書について』

辛辣な読書論。 ■1 無知は富と結びついてはじめて人間の品位を落とす。富める者がその富と時間を有効に使わない場合は非難されるべきである。 ■2 読書とは他人にものを考えてもらうことであり、自分の頭を使うことがない。したがって多読するほど、自分で考…

カール・ヒルティ『時間のつくり方』(幸福論第一部)

■はじめに。本当に時間は無いのか 「時間がない」は便利な言い訳であるだけでなく、実際尤もらしく見える言い分である。現代では時間に追われて、落ち着きなく働き、しかも大した成果を出せない人がいる。その一方で多く休まず、しかし焦りもせず多くの仕事…

B・フランクリン『富に至る道』(自伝付録)

アメリカの最高額紙幣の肖像でおなじみベンジャミン・フランクリンは新聞業を営んでいた時に「リチャード・ソーンダーズ(愛称:貧しいリチャード)」というペンネームでカレンダーを発行していたが、カレンダーは本を買わない人にも読まれることに着目し教訓…

カリエール『君主とその大臣たちにうまく取り入る方法』(外交談判法第十五章)

18世紀フランスの外交官が書いた外交官心得の一章 ここでいう外交官は相手国の宮廷に常駐して持続的に交渉する役割(ちなみにカリエール自身はそういう仕事ではなく、交渉のたび相手方に赴くタイプの外交官だった模様)。 今そんな仕事があるかは知らないが、…

洪自誠『多く蔵するものは厚く亡う』(菜根譚後集五十三)

菜根譚はマルクス・アウレリウスとだいたい同時期に読み始めたので個人的にはかなり影響を受けた。書かれた時代も場所も違えど、ところどころかなり似通ったことを言っている。 菜根譚の内容は理想主義的な遁世思想と言えなくもないが、実際的な処世の知恵も…

アレクシス・カレル『創造する精神』(人間、この未知なるもの四章)

血管の縫合とかなんかでノーベル医学賞受賞。ノーベル賞受賞者の割りに「残念ながら、我々優秀な白人と比べて他の人種は劣っていると言わざるを得ない」とか「運動選手は知能が低い」とか各種差別のオンパレードなのでそこは割り引いて読まないとダメ。しか…

セネカ『人生の短さについて』

手元の岩波文庫では『人生の短さについて』だが最近発行してるのは微妙に改題して『生の短さについて』になってる。「人生」と「生」では後者の方が命全般のスケールのでかい話になるような気がするが内容的には人間の生き方の話に終始してるのでどちらでも…

吉田兼好『芸を身につけようとするなら…』(徒然草第百五十段)

この段落では(芸術に限らず)様々な業界で卓越しようと志す人に対してのアドバイスが書いてある。 はっきり言ってかなりためになる。 というか、口先では立派なこと言いながら何も形に出来てないグズの心に刺さりまくるやつ。 ◼︎全文の引用 能をつかむとす…

モンテーニュ『臆病は残酷の母』(エセー第二巻第二十七章)

この章では臆病と残酷さの関係の他、卑怯、純粋な残酷について語られている。 卑怯については決闘と関連して語られていて、「剣術は勇気ではないので卑怯!だから貴族は名剣士と呼ばれるのを嫌がった」など興味深い話が並んでるが、モンテーニュ自身が言う通…